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血友病保因者さんとそのご家族の方へ保因者と出血

監修

久留米大学医学部 小児科学教室 松尾 陽子 先生

保因者でも出血傾向で困ることがある

「保因者」とは遺伝上の呼び方で、病名ではありませんが、血友病のような出血傾向がみられる人もいます。保因者の血液凝固因子活性は50%程度だと予想されがちですが、実際には個人差が大きく、なかには凝固因子活性が10%以下の保因者もいます。

血液凝固因子活性と血友病の重症度

血友病の重症度は凝固因子の活性がどのくらいあるかで分類されています。保因者であっても凝固因子活性が低く、軽症、中等症の血友病に相当する人がいます。

参考) インヒビターのない血友病患者に対する止血治療ガイドライン: 2013年改訂版(日本血栓止血学会)

出血症状が生活の質(QOL)を下げていることも

保因者のなかには月経過多や鼻出血、青あざが多いなどの出血症状がみられる人がいることが分かっています。どの症状も、血友病と関係なくても生じうる症状なので、保因者であることと結びつけて考えていない人も多いでしょう。しかし、月経過多による慢性的な貧血が集中力低下や疲労感につながり生活の質(QOL)を低下させている可能性もあります。

保因者の出血の種類と頻度

●保因者の出血の種類と頻度

西田恭治. 血栓止血誌 2021; 32: 33-41(Sharathkumar A, et al. Haemophilia, 2019. Miesbach W, et al. Haemophilia, 2011. Plug I, et al. Blood, 2006. Mauser Bunschoten EP, et al. Thromb Haemost, 1988より西田先生が作成された)

月経出血が重いかどうかは判断しにくい

月経出血が重いかどうかは判断しにくい保因者に多く見られる出血症状の一つは、月経 過多と呼ばれる重い月経出血です。しかし、月経出血の程度を他の人と比べる機会はなかなかありませんし、母親や姉妹はあなたと同じ保因者である可能性もあり、同じように月経過多の状態かもしれません。そのため、自分の出血量が多い、月経症状が重いと感じられない保因者もたくさんいます。
また、医療者であっても、過多月経と保因者である可能性を結び付けて考えられる人はまだまだ少ないのが現状です。婦人科医やかかりつけ医に相談しても、保因者の出血症状に慣れていないため、他の原因疾患を疑い、保因者であることが見逃されてしまうことも少なくありません。
「保因者健診」では、保因者の可能性がある女性の出血傾向やその対処方法について相談することもできます。

日常生活に支障はなくても不慮の事故や出産時は注意が必要

日常生活に支障はなくても不慮の事故や出産時には出血傾向があることで生じるリスクがあるため、そのリスクを保因者自身やご家族が知っておくことはとても大切です。

事故や出血を伴う処置、手術など

日常生活に支障がない人でも、不慮の事故に遭ったり、手術や出血を伴う処置を受けたときに、出血が予想外に多くなる可能性があります。本人が「自分が保因者であることや、出血が止まりにくい体質であること」を認識していない場合、手術や処置を行う医療者にも情報が伝わりません。十分な止血管理が行われない場合には、命が危険にさらされる可能性もあります。

出産時は母子ともに配慮が必要

自然分娩の場合も帝王切開の場合も、出血が止まりにくい体質であると認識せずに出産に臨んでしまうと、分娩時の大量出血により母体に危険が及ぶことがあります。
また、生まれてくるお子さんは血友病である可能性あります。赤ちゃんが血友病であった場合は、吸引分娩や鉗子分娩などを行うことで頭蓋内出血が起こり、重大な後遺症が残ったり死に至る危険性もあります。

将来に対する漠然とした不安をひとりで抱え込まないで

保因者のお子さんは男児なら50%の確率で血友病になり、女児ならば50%の確率で保因者となります。血友病であっても適切な治療を続けることで、大きな支障なく生活している患者さんはたくさんいます。しかし、お祖父さんやお父さんが血友病だった方は、血友病性関節症で苦労する姿をみて、血友病の子どもを持つことを不安に思っているかもしれません。そのため、「子どもを産んではいけない」と考え、結婚をためらう人も少なくありませんでした。そうした不安や悩みは、専門医を受診して相談することで、解消できる可能性があります。

ぜひ、現在行われている血友病治療の正しい情報を得て、前向きな人生設計をしていただきたいと願います。